「貿易立国」から「投資立国」へ意味するところ
日本の経常収支黒字が揺らぎ始めたようです。
経常収支は、輸出から輸入を引いた金額の《貿易収支》と、
海外からの観光客が日本で使ったお金から日本人が海外で使ったお金を差し引いた《サービス収支》に、
対外直接投資や証券投資の収益《所得収支》を合計したものです。
日本はこのところ貿易収支は赤字ですが、それを補って、
所得収支(日本人が海外から受け取った利子や配当)が黒字でしたので、
全体として経常収支は黒字でした。
ところが、1月の経常収支が1.1兆円の赤字となりました。
原油などエネルギー価格の高騰で輸入が膨らんだためです。
加えて、経常黒字を支えてきた配当などの所得収支もウクライナ情勢によっては、
所得収支も下押し圧力がかかりかねず、危惧されています。
言い方が適切ではないかもしれませんが、
額に汗して働いて作ったモノを輸出して稼ぐより、
投資に回して 得られるお金《所得収支》の方が多いのが日本の現状です。
ここでも、労働収入(g)より資産からのリターン(r)の方が大きい、
r>gの公式が当てはまりそうです。
経常収支の黒字を家計に例えると、お父さんが働いて稼ぐお金より、
お母さんがお父さんの稼ぎをへそくりで貯めたお金で投資した
外国株からの収益の方が上回ってしまった。(つまり、r>g)
個人でも、米国のS&P500やNSDQ100、世界株式の投資信託でも、
投資からの収益の一部を所得税として払うことで日本の税収は増えます。
経常収支黒字への貢献です。
日本は所得収支(投資)が黒字だから大丈夫と、
国の家計簿、経常収支が黒字なことに胸をなで下ろす一方で、
個人の投資となると躊躇したり、リスクばかりに目が行くのはおかしなことです。
資本からの収入にもっと目を向けるべきです。
家計だって、働いて得るお金(g)と資本からの収入(r)の2つの収益源があった方が安心ですよね。
投資は三方良しの行為
近江商人の商売理念として、
『売り手によし、買い手によし、世間によし』を示す『三方よし』が伝わります。
『投資』も、同じです。株式投資の仕組みは、
株式を発行する会社にとっては、返済義務のない資金を得ることです。
投資で得られた資金は設備投資や研究開発費として使えます。
《売り手よし》
株式の買い手である投資家は、株価の値上がり益や配当金を受取れます。
利益の一部は税金として国に治めるルールです。
《買い手よし》
モノやサービスは生活者が必要だからこそ売れるわけで、
企業は世に必要とされるから成り立ちます。
より良いものやサービスは生活を便利に豊かにします。
《世間によし》
『投資』は売り買いによる損得でも、自らの利益追求ばかりでもありません。
社会全体を潤す『三方よし』の立派な行為です。
ウクライナ情勢が混沌とする中、方向の定まらない相場展開ですが、
投資にとっては必ずしも悪い状況ではありません。
確定拠出年金やNISAを使った国際分散投資で、
淡々と積立てを継続する人にとっては、上げ一方の相場より、
かえってチャンスで楽しいかもですね。
投資は立派な社会貢献、日本の財政を潤す一助を担っていることを意識して下さい。