パックンが提唱する投資とは

日本のこどもの貧困率は高い

春うららの穏やかな陽気なのにコロナ「まん延防止法」で、外出がためらわれる日々が続きます。

コロナ禍で特に影響が大きいのは母子家庭で、パートの雇止めやシフトが削減されても「休業補償」もなく、途端に生活苦に陥ってしまうそうです。

ひとり親世帯は母子家庭が123.2万世帯、父子世帯の18.7万世帯に比べ、圧倒的に母と子です。平均労働収入は父子家庭が400万円以上なのに対し、母子家庭はその半分で暮らし向きが苦しいのは当然です。<内閣府資料>

厚生労働省の「国民生活基礎調査」では、子どもの約7人に1人が貧困状態にあり、国際的に高い水準なのです。 

経済大国のはずの日本の子供の貧困率が、国際的にも高いなんて。。。

※貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2つの定義があります。「絶対的貧困」とは、人間として最低限の生存を維持することが困難な状態を指し、飢餓に苦しんでいたり、医療を受けることができなかったりする状態。「相対的貧困」とは、世帯の所得がその国の可処分所得の中央値の半分に満たない状態。

スマホもテレビもある。外見的特徴を見る限り、貧困とはわからない。

でも、塾にも行けず、家族旅行どころか、修学旅行にも行けない。

学校に行けない時期は給食も食べられず、途端に痩せてしまう。

弁当も100円ではおにぎりも買えないので、駄菓子。

 

パックンの壮絶な子供時代

相対的貧困の子供たちは・・・、「日本の貧困は見えづらい。」

このままじゃダメだ!日本、と本に著したのは、パックンこと、パトリック・ハーランさんです。

貧困家庭の子供たちは文房具も買えない、お腹いっぱい食べられない。パックンもかつてはそんな貧困の中で育った子供でした。

驚きです。180センチ以上ある堂々とした体躯で、ハーバード大学卒業、知的で、経済番組のコメンテーターや大学の講師を務めるパックンは、エリートそのものにしか見えませんでした。

そのパックンは、両親の離婚で母親と、お姉さんは父親と暮らすようになり、貧乏生活を余儀なくされました。

 

鉛筆とボールペンは基本的に買わない。鉛筆はたいてい学校のどこかに落ちていたし、ボールペンは銀行でもらえる。参考書も買ったことがない。読みたい本は図書館で借りる。

 

大学時代も石鹸は一度も買ったことがありません。シャワールームに小さくなったまま放置されたものを集め、水で固めた「オリジナル石鹸」で洗う。

 

頭が痛いし、体もフラついている。集中できない。これは風邪などではなく空腹のサイン。それを察した先生が保健室で「牛乳とクッキー」を出してくれました。まるで光り輝いているようにも見えました。「脂質、タンパク質、糖質」の3大栄養素を補給させてもらえたことに感謝。

新聞配達のアルバイトは10歳から始め、雨の日も雪の日も8年間毎日です。

でも、新聞配達のおかげで上腕筋と太ももが「がんばり筋」と「努力筋」となったそうです。

ショベルカーやフォークリフトの操作は15歳で覚えました。

「自分で頑張ってお金を稼いでいる」「お母さんの助けになっている」という達成感や充実感もありました。

パックン著書のタイトルは「逆境力」です。

「お金がない」と泣くのではなく、「ないなら、ないで何とかしよう。」

「何とかなるもんという前向きな発想が働くようになったのもまた、貧乏生活のギフトです。」

こんなふうに全て前向きでプラス思考なのです。

スキーをするにもジャンパーにジーンズ、ジュニア用の短いスキー板。転ぶとビショビショになるので、転ばないように滑る。板が短かったのでかっこよく見せるためにジャンプしたりで、おかげで人より早く上達した。

テレビがなかったおかげでたくさん本を読んだことで、自然と大学を目指せるほどの語彙力や基礎知識が養われた。

ボーっと生きてきた私からすれば壮絶で、正に逆境をバネにプラス思考で頑張ってきたのでしょうが、並み大抵ではなく、とてもすべての貧困家計の子どもに出来ることとは思えません。

でも、これは、本来子どもが味わう必要のない苦労だと思います。

 

これが本来の「投資」の姿

日本の公財政教育支出は、OECD平均の4.9%に対して4.0%と低く、私的負担割合は韓国に次いで大きいのです。

<OECD2020年版「図表で見る教育費>

著書の中に、(日本は)貧困家庭を放置することにより、42.9兆円の経済損失と15.9兆円の政府支出、合計58.8兆円もの社会的ダメージになる。これらの社会的損失は、結果的に国内市場の縮小、労働生産性及び参加率の低下、社会保障負担の増加につながる。と述べています。

そして、貧困家庭に対する支援には58.8兆円もかからない。支援のために費やされる金額よりも、将来的に得られる金額の方が大きい。これは将来リターンの見込める「投資」なのです。と、言い切ります。

貧困家庭の支援も含め、社会の財産である子供に資金を投じなければ、日本の国力が削がれてしまう。貧困家庭支援は「福祉」ではなく「投資」なのです。それも「ローリスク・ハイリターン」の。

こんなに良くできた投資案件は、そうお目にかかれるものではありません。

とは、いかにも投資家パックンの視点です。

パックンの提唱する「投資」に大賛成です。

「投資」は自分の儲けや損得だけのものではない。

「投資」は自分良し、相手(投資先)良し、社会にとっても良い、三方良しが本来の姿です。

「逆境力」の中には、NPOや民間で支援(投資)を実施している団体が紹介されています。私も投資家の端くれですが、せめて投資収益の一部を寄付という形で使いたいと思います。

「こども庁」の創設が検討され始めました。

どのようなものになるのかは分かりませんが、現在活動されている方たちや、実績のあるところの声を聴いてほしいと願うばかりです。