インデックスとアクティブの違い
投資は結果が全て、理念だ哲学だと言っても、結果が伴わなければ見向きもされず、
運用成績が悪ければやがては解約、売られてしまいます。
インデックス投信が推奨されるのは、良くても悪くても、マーケットの値動きそのものだから、
運用側は結果を問われることなく、投資者も何のこだわりもなく受け入れます。
TOPIXであれば、日本株式会社そのものであり、S&P500であれば米国経済の動きが端的に分かる。
株式投資とは、マーケットの利益を受取るものなのだから、インデックス投資は理にかない、これでいい。
インデックスと対を成すアクティブは、インデックスを上回る成績が宿命ともいえます。
そこで、これから儲かりそうなセクター、発展しそうな地域や会社を探し集中投資します。
アクティブは「運用方針」や「運用哲学、理念」を打ち出し、賛同者を募り、
参加者はインデックス投信に比べ手数料が高いのは承知のうちです。
のっけから、評論家みたいなことを並べてしまいましたが、
鎌倉投信のオンラインセミナーでミドリムシのあの会社、ユーグレナの出雲社長の話しと相まって、
投資信託について改めて考えさせられました。
鎌倉投信という アクティブ投信
古都鎌倉市の古民家で「結い2101」(ゆいにいいちぜろいち)投資信託を運用する鎌倉投信株式会社は、一風変わった投資信託運用会社です。
鎌倉市雪ノ下の「鎌倉投信」社屋と
いい会社に投資する日本株投資信託「結い2101」
まずは、鎌倉投信の掲げる投資哲学・運用理念を眺めてみて下さい。
投資は〝まごころ〟であり、金融は〝まごころの循環〟である。
と、投資哲学を掲げます。
とてもホンワカと、情緒的です。
他のアクティブ運用会社のように、市場リターンを上回る運用を目指しますとか、
イノベーションに特化した投資先ですとか、〇〇の発展を見越したとかは書いてありません。
書いてあるのは、
鎌倉投信の運用する投資信託「結い2101」は
~「100年個人投資家に支持される長寿投信を目指し、300年社会に貢献する企業を支援し、
1000年続く持続的な社会を育む」~ をコンセプトに、
日本に本当に必要とされる良い会社に投資をしていくことを目指します。
「いい会社」とは、
いいことをして稼いでいる会社かどうか《社会価値》
人材を生かせる会社・持続的社会を創造する会社《共生》
日本の匠な技術・感動的なサービスを提供する会社《匠》
そのうえで、変化への対応力、革新性があり持続的価値のある会社
これまたポエムのような。。。ですが、大まじめです。
投資先の全ての企業名を公開し、どの会社にどのような理由で投資しているのかを丁寧に開示しています。
鎌倉投信の投資先は現在69社で内訳は、以下の通りです。
「人」「共生」「匠」とテーマに沿った会社にほぼ均等に割り振られています。
全体の6割が小型株で、非上場株も3.2%あります。
PERやPBRといった指標は気にしていないようです。
儲かりそうな会社を探しているわけでもありません。
ひたすら「いい会社」です。
何故「いい会社」か、どうして選んだかは以下で見られます。
一般的に、投資信託の運用報告書で確認できるのはせいぜい組み入れ上位10社程度で、
運用先全てを開示している投信は少ないですよ。
ましてや、投資先の選択理由なんて、儲かりそうな会社、投資家に収益をもたらすことのできる
会社だから選ぶ訳で、それ以外の説明なんて必要ではありません。
これだけでも、変わった鎌倉投信ですが、
〈ポートフォリオの資産構成比〉にあるように、キャッシュが32.3%もあります。
つまり、集まったお金の1/3は投資されていないのです。
~鎌倉投信は当初から、「リターンを追求するのではなく、リスクを抑えた運用をする」としており、
その結果として「30%以上の現金を確保する」ということも戦略的に行っています。
少しでも多くのリターンを得たいと思っている人には向きません。~ と、断っています。
本当に変わっているでしょう。
売買手数料はかかりませんが、信託報酬は年率1%で、他のアクティブ投信並みです。
32.3%のキャッシュにも1%がかかりますので、何も運用されていないのに1%引かれる。
NISA,つみたてNISAにも対応しますが、滅茶苦茶コストの高いアクティブ投信です。
運用成績はここ5年平均で年率7%です。
運用目標が、信託報酬1%を引いて4%なので、目標達成といったところでしょうが、
成績はインデックスのTOPIXには及びません。
インデックス型に負けるアクティブ投信です。
なのに、 「結い 2101」の純資産総額が500億円を超えました。
投信の規模としては決して小さくはありません。
優秀ファンド賞も何回か受賞しています。
先日のオンラインセミナーも1千人を越える参加者です。
ユーグレナの目指す未来
さて、鎌倉投信の投資先のひとつが、株式会社ユーグレナです。
ユーグレナは東証一部【食品】に分類される会社です。
ミドリムシからなる健康食品や化粧品販売、バイオ燃料開発を手掛けています。
今回は、いつもミドリムシ色のネクタイをしている出雲社長が、ミドリムシが作り出す油、
バイオ燃料「サステオ」について話されました。
写真の通り笑顔いっぱいで、掛け値なしでハッピー感が伝わってきます。
小さなミドリムシが作り出す油で飛行機が飛ぶんです。
ユーグレナのバイオ燃料で、鹿児島空港から、羽田空港までのフライトを成功させました。
勿論ミドリムシの油だけでは足りませんので、家庭で使った天ぷら油の廃食油!まで再利用して、
リサイクル燃料を目指します。
2050年までに飛行機だけではなく、バスや乗用車の燃料もバイオ燃料の「サステオ」に変えたい。
車の燃料はEV(電気)、水素へが主流のようですが、EVや水素スタンドに変換するとなると、
現在あるガソリンスタンドをスクラップ&ビルドしなければならないのです。
「サステオ」なら今ある3万か所のスタンドをそのまま使えます。
EVはクリーンかも知れないが、作るのに日本の発電の70%は化石燃料を燃やしている。
トータルで見るとCO2は削減されない。
出雲社長は、中小企業の課長さんか、工場長の雰囲気で、熱く語り、一つひとつ頷けました。
もう一人、ユーグレナさんのCFOが出演されました。
CFOは普通 Chief Financial Officer(最高財務責任者)ですが、
ユーグレナのCFOはChief Future Officer、最高未来責任者です。
2代目CFOの川崎レナさんは、高校生です。
スウェーデンの環境活動家 グレタ さんに引けを取らないしっかりした意見を持ち、
堂々と話され、おばさんは刮目してしまいました。
変な投信会社が目指すいい社会
株式会社ユーグレナの株価は、上場時に比べずっと低迷のままです。
業績も、、、です。
他の投資信託なら、ユーグレナは組み入れないのではと思います。
なのに、鎌倉投信はユーグレナに投資し続けています。
ユーグレナは《共生》のジャンル、バイオテクノロジーで人と地球を健康にすることを目指す、
いい会社に入ります。
利益を出す会社はいい会社ですが、
いいことをしている会社を応援するのが投資家の矜持との思いが貫いているから投資する。
外さない。
日本は化石燃料使用率の高さで批判を受けています。
出雲社長はカーボンゼロ社会の実現に向け「サステオ」の工場拡張へと夢を語ります。
日本はこの分野でも頑張らないといけないのです。
ユーグレナ以外でも、鎌倉投信には、エフピコ、マザーハウス、ベルグアース、マニ―、ナカニシ等々、
地方のそれこそ地味だけれど「いい会社」の投資先が並びます。
マニ―とナカニシは私の郷里栃木県の会社で、
どちらもニッチな医療機器の分野で世界シェアトップの会社です。
鎌倉投信との出会いは、気になる会社がいくつも入っていたからです。
今流行りのESG投信。
ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)
3つの観点で、企業経営においても長期的成長を目指す上でも外すことのできない観点です。
ESG抜きには投資を呼び込めません。
鎌倉投信の《社会価値》《共生》《匠》の「いい会社」は、正にESGの先駆け、
10年前からこんな視点で投資先を選別していました。
投資は必ずしも儲けが全てではないようです。
一人一人の投資家が、いい社会を作る一助になることだってできます。
投資の役割は大きい。
鎌倉投信の投資家は、それが分かっているから、
多くのリターンより、安い手数料のインデックス投信よりも、
半分寄付みたいな思いで託すのでしょう。