待つことで叶うことがある
秋のこの時期になると出生地の栃木県茂木町那珂川を思い出します。
那珂川は、鮭が産卵のために遡上してくる大きな川で、シーズンになると見に行きました。子供の目に泳ぐ鮭を捉えることはできませんでしたが、釣り上げる度に歓声が沸き跳ね上がる鮭の姿は感動的でした。
鮭を釣るには許可が必要だったのでしょうが、それ以外は自由に釣りが楽しめたようです。ある日父に連れられ大人の釣りのお供をしたことがあります。
日も暮れて、ぐずり始めてきた頃、それまでひとつも釣れなかった父が大物を仕留めました。
それも続けて2尾です。
他の大人たちは、数は釣れてはいましたが小ぶりで、その日の1番は父でした。
小学校に上がる前のことでしたが、夕暮れの川の匂いと満足げな父の顔まで思い出せそうで、
ずっと記憶の端っこに引っかかっています。
「待つことも必要」とは、投資の世界で言われることです。
トレードで小さな利益を上げることも出来ますが、一旦これと決めたなら
あとは淡々と、大きく育つのを待つ。
子どもがぐずろうが、周りがどうだろうが、待つことも大事、待つことで叶うこともある。
遠い遠い昔の父の釣りの風景に繋がる想いです。
65歳以上の就業率が高いのは
下の表は平成31年4月に出された「人生100年時代の資産形成」と題する金融庁資料です。
こうしてみると、日本の平均所得金額は全世帯平均でも、
高齢者世帯平均でもアメリカ・イギリス・ドイツよりも低いことが分かります。
特に高齢者世帯の所得はアメリカの半分、イギリス、ドイツは日本の約1.4倍と、
日本の高齢者世帯の所得の少なさが際立ちます。
アメリカの高齢者は月平均50万円以上の所得で、日本の約2倍です。
これなら悠々自適ですね。
日本の65歳以上の就業率は諸外国に比べ高く、
働く理由としては年金だけでは足りないためがトップです。
金融庁の危惧するところは、高齢期の所得が米英独に比べ少ないうえに、
所得の内訳は、労働収入の割合が高く資本からの所得が少ないことにあります。
資本からの所得とは、確定拠出年金やNISA等からの収益でもあります。
ポートフォリオを変えなければ
老後生活資金を公的年金だけで賄うことが難しいため、65歳以上も働く人が増えている。
米欧が日本ほど就業率が高くないのは、
老後生活を支えるもう一つの柱として、資本からの収入があるからでしょうか。
日本は運用リターンによる金融資産の伸びがいかに少ないかが分かります。
米国は20年間で運用リターンが2倍に増えているのに対し日本は2割です。
資本からの所得をいかに増やすかは、国民的課題と言えます。
資本からの収益が少ない原因は何処にあるのか。
お金の預け先、ポートフォリオの違いです。
コロナ過でも日本の個人金融資産は2000兆円と、過去最高に膨らみましたが、
預け先は現金、預貯金、保険・年金等、低金利の確定利回りです。
米国、ユーロ圏は株式、投資信託、確定拠出年金等の運用資産です。
日本の高齢者が65歳以上も生活のために働かなければならない理由の一つは、
資産からの収益が少ないためといえます。
収益を生まない預け先の比重が大きいからです。
ほんの少しお金の預け先、ポートフォリオを変えることで、
欧米並みに効率の良い運用で老後資金を増やすことができます。
会社から分捕る
資本からの収益は株式から得られます。
不動産所得や印税などの権利所得より手軽で、
纏まったお金や特別な才能がなくても誰でもアクセスできます。
株式への直接投資ではなくても、確定拠出年金やNISAを通じての株式投資信託でも同じことです。
企業は、投資者に報いることが大命題です。
配当や、企業価値を高め株価を上げることが投資家に報いる術です。
日本の企業は、従業員への給与も設備投資も横ばいですが、配当金だけは増やしています。
株主の要望によるためです。
経営者は、(特に物言う)株主の意向に沿わないわけにはいきません。
本当は従業員の給料を上げたいけれど、株主配当を優先しなければ役員を解任されてしまうかも知れません。
問題は、日本企業の株主の3割は海外投資家で、売買主体の7~8割は外国の投資家です。
つまり日本株の動向は海外投資家で決まってしまう。
配当金も、値上がり益も海外投資家へ流れます。
そうなると、日本企業は何のために存在するのか。
生活者や、社会のためにどれほど還元されているのでしょうか。
株式投資をしないことで、折角の収益の源、株式からの収益を海外に逃してしまい、
老後生活資金に事欠くなんて本来の姿ではないはずです。
株式投資本来の姿は、企業も、株主も、社会も共に育ち発展し豊かになる。
「新しい資本主義」ではなく、資本主義本来の姿を問い直すべきと思っております。
果たして日本は本来の資本主義が根付いているのでしょうか。
会社から得られるのは給料だけではありません。
企業から得られるもうひとつの収益、配当金やキャピタルゲインは
自身の働いている会社以外からでも得ることができます。
株式投資を危険なゲーム、してはならないこと、お金がないとできない等々、
誤った認識のままでは、日本人は誰のために働いているのか。
給料が上がらないのなら、株主となって会社から株主配当や利益を分捕る。
大上段な言い方ですが、会社から得られるもうひとつの収益を見逃さないことで、
老後資金をせめて米英独並みにすることはできます。
そのためには、株式投資の第1歩、確定拠出年金やNISAの株式投資信託を活用することです。
すぐに結果が出ることではありませんが、「じっくり待つ」ことで叶います。