DEIを巡る二極化
米国のアップル社は、一部の株主から提案されていたDEI(多様性・公平性・包摂性)
への取り組みを止めるべきだとする提案を否決したとのことです。
DEIとは、性別や年齢、障がいの有無、国籍、価値観などにかかわらず
(Diversity/多様性)、公平性(Equity)を受け入れ(Inclusion/受容・包括)働ける環境のことです。
ところがかの国では、大統領が代わった途端、
連邦政府のDEIプログラム終了を目的とする大統領令に署名し、
まずは連邦政府機関のDEI担当職員を休職扱いにし、
DEI枠で採用された人達には逆風が吹いているようです。
DEI推進の先駆者とみられていた大手金融機関ブラックロック始め、
メタやアマゾン、グーグルが反DEIに動き、 トランプ氏が決めた方針に従う。
それとは対照的に、アップルのクックCEOは、DEIについて
「法令順守のため多少の変更は余儀なくされるかもしれないが、
全ての人に対する尊厳と尊重は決して揺るがない」と強調し、
大多数の株主も支持をしたようです。
孟嘗君の食客
「鶏鳴狗盗 」の故事で知られる孟嘗君(もうしょうくん)の食客は3千人と言われます。
身分や能力にかかわらずあらゆる人を歓迎しましたので、優秀な食客の中には、
自分より劣る食客に対し「飯泥棒だ」と不満を漏らす人がいます。
孟嘗君が秦に幽閉されたときに、
泥棒を得意とす食客が盗み出した狐白裘(こはくきゅう)を献上して命乞いをし、
まだ暗いうちに函谷関の門を開けさせたのは鶏の鳴き真似が上手い食客です。
2人のおかげで無事脱出できました。
孟嘗君の命を助けたのは、優秀な武官でも知恵者でもなく、
3千人の食客の中の狗盗(犬のように忍び込む盗人)と鶏鳴(鶏の鳴き声)ができる末席の食客です。
孟嘗君は、多様な人材を抱える組織は強く、問題解決にも有効なことを分かっていたのでしょうか。
DEIの目的のひとつ「多様性と包摂性」は、企業にとって重要な要素では。
多様性を持つことが結局は
後年、孟嘗君が斉の宰相を更迭されると食客たちは去って行ました。
「宰相でなくなると食客の能力は発揮できません。仕方のないことです。
戻ってきた食客をぞんざいに扱ってはなりません。」と諭したのは、たった一人残った食客でした。
DEIにおいてアップルのスタンスとは異なりますが、
アマゾンもメタもグーグルも、米国の企業で
「DEIに関する法律・政策面の環境に大きな変化が多数生じたためDEI目標を廃止する 」は、
致し方ないことなのかもしれません。
現大統領が代わった時、
企業がDEI戦略を継続する方が長期的な成功と持続可能性に寄与するか否か、
時の審判を待ちます。
食客は主人を助ける者、アドバイザーです。
例えば、押し活や株主も一方通行ではなく、
押し主、投資先企業から得るものがあるから続けられるのですよね。
取り巻く状況は不変ではありません。
投資においても、不確定要素が多いときこそ、多いからこそ、
一極集中ではなく多様性、分散投資が有効です。
1人で迷う時、アドバイスが必要な時はご連絡下さい。