森卓さん、それはちょっと・・・

 

「この喉陳子何?」

「えっ、バットマンでしょう。」

バットマンも映画も知らなければ、バットマンには見えない。

「扁桃腺炎かと思った。」

30年も前の会話を思い出しました。

並んで同じものを見ていても、隣の人と同じく見えているとは限らない。

見る人のアイデンティティやヒストリー、状況によって見る視点が違ってくる。

2本の線は同じ長さです。

元々は同じ長さの線が、余計な線が加わると違った長さに見えてきます。

矮小化して見せる線、針小棒大に見せる線、本来の姿は一つでも

余計な線、雑多な情報や余念が入ると違った見え方になる。

 「投資依存症」?

「平賀さんの言うこととは違っていますが。。。ご感想を」で、

お借りし下さった森永卓郎著書の『投資依存症』です。

本屋さんで横目で見ただけで、手に取ることはありませんでした。

読み進めていくと、バブルの話しや「投資銀行」の実態、

SNS詐欺に一番名前が使われたのは森永さんであること、

最終章では、森永さんを語る詐欺に遭われた69歳の女性の話しに胸が詰まりました。

第3章の《強欲な金融業者》は興味深く、第5章の《そして、あなたは熱狂する》は、

何故森永さんが投資を否定するかが、少し理解できたように思いました。

次の箇所は思わず!! ほんとに?

~今から150年も前、マルクスも資本主義が行き詰まることを予言していた。

その理由は、

①許容できないほどの格差

②地球環境破壊

③少子化

④ブルショットジョブの蔓延 本文からの引用~

確証バイアス(自分の既存の信念や仮説を支持する情報ばかりを集め、

それに反する情報を無視したり軽視したりする) の罠に嵌っていたのかも。

面白かったです。お貸し下さったKさんに感謝です。

それでも本題である、

「お金を投資で増やそうという考えを完全に捨てるべきだ。」そこは違う。

東京大学経済学部卒の経済アナリスト、森永さんに反論するのは

おこがましいのですが、同じ「投資」という行為でも森永氏とは相入れないものがあります。

 投資はギャンブル

・投資の本質はギャンブルと同じであると主張しています。

 お金は働くことでしか増やすことができない。投資は勝つ人と負ける人が

 出てくる。したがって投資はギャンブと同じである。

株式投資は、FX投資などとは違い投資先の企業価値が上がりることで投資額が増え、

配当金、キャッシュフローも見込めます。

森永氏も、トマ・ピケティの唱える、

※「r(資本の収益率)>g(経済成長率)」を否定せず、

いつの時代でも5%程度で安定していると書いています。

※労働による収益よりも株式や不動産といった資産からの収益の方が大きい。

森永氏はその恩恵にあずかるのは一部の資本家だけだとみているのです。

~資本家は景気がよかろうと悪かろうと、

自分が持つカネだけは毎年5%ずつ確実に増やし続けてきたということなのだ。 本文からの抜粋~

例えば、確定拠出年金やNISA口座に少額でも資産残高があれば、

資本の出し手はすべて資本家です。資本家は長期的にはプラスとなっています。

下図の囲みには、次のようにあります。

➢ 米国では、約40年の間で、金融資本市場の発展と企業の成長が著しい。

➢ 背景の一つとして、米国では家計の資産形成を支援する制度(主に私的年金制度)の整備が進んでおり、家計の年金資金 が積立投資の形で長期安定的に市場に流入していることが、市場の需給構造にプラスの影響を与え、その他の要因と相 まって、家計と企業の間の「成長と分配の好循環」の実現に寄与していると考えられる。 

株式や投資信託401Kといった投資資産が大きく増えています。

401K・IRAの残高は約40年で94倍にとあります。(100万円が940万円に)

国民の大多数が投資商品を持つ米国では、

恩恵に預かっているのは、決して一部の資本家だけではありません。

対する、日本の家計の資産形成を支援する制度の整備は、米国より20年遅れで始まったところであり、

NISAやDCの残高は未だ市場に大きな 影響を与える程の規模にはなく、

成長と分配の好循環が実現しているとはいえない。

➢ このような状況を背景に、日本企業の存在感は40年かけて低下し、

成長著しい米国企業と大きく差が付けられている。 

1980年から2022年まで、42年に及ぶ検証です。

勿論過去のことで、未来のことは分かりませんが、この事実に目を背けることはできません。

森永氏の仰る投資は「投資ではなく投機」で、そこにおいての指摘は間違いではないのですが、

「正しい投資」を鑑みるとiDeCoやNISAを否定することは、

国民のそれこそ大切な資産形成の機会を奪うことになりかねません。

『投資依存症』は、それなりに意義のある著書と思いますが、投資否定は残念です。

YouTube動画で息子さんの森永康平氏は、

「NISAは利用しない理由がない。おっさん(卓郎氏)は引っ込んでろ。」

と言っているんです。驚きました。(笑)