難敵はオルカン

 円安は複合要因

最大9.7兆円の円買い介入にもかかわらず円高とはならず、

つい2年前まで1ドルが120円以下だったことが信じられないくらいです。

いくら為替介入しても、介入に動じず淡々と円を売り続ける難敵がいる。

通称「オルカン」と呼ばれる海外ファンド買いへ向かう個人マネーです。

SBI証券の新NISA買い付金額ランキング1位から5位までが海外株式ファンドで、

今後もこの流れは続きそうです。

そうなると、何とか円安にブレーキを掛けたいと願っている筋からすると、

「難敵はオルカン」なのでしょか。

勿論円安の原因は一つではなく、複合的な要因が重なってのことです。

・日本企業が海外で稼いだ収益を海外拠点に留め、国内に還流しない。

 日本企業の海外留保利益は48兆円とも言われますが、それを円に戻し、

 国内での投資や賃金アップとはなっていない。

・日米の金利差が縮まらない。

 直近10年の国債利回りは日本は0.97%、米国は4.43%と金利差は3%以上で

 マネーは金利の高い国へ向かう。

日米国債利回り《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

・海外から日本への投資が細っている。

 少子高齢化で低金利の日本よりは、他のアジア諸国の方が魅力がある。

 日本のビジネス環境は外国企業にとっては障壁が多い。

6月4日の日経新聞によると、財務省は「難敵はオルカン」と脅威を感じているようです。

過去の実績で見ると、国内株式よりオルカンやS&P500 の方が良さそうと、

個人のNISA資金は海外株式に向かっています。

三菱UFJ eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)は1日で1000憶円買われ、

既に資産残高は3兆5千億円超です。

新NISAは始まったばかりなので、当局の憂いは杞憂とは言えないかもしれません。

 小さな投資も集まれば

一つ一つの積立て投資額は小さくても、多くの人が集まれば大きな力となり、

それこそ山をも動かすことができる。

コロナの最中に米国で起きた「ゲームストップ株騒動」を思い出しました。

それまで見向きもされなかった「ゲームストップ株式」を

ヘッジファンドが空売りしていることを知った若者がSNSで呼びかけ

多くの人がゲームストップ株式を買ったことで、ヘッジファンドに巨額の損失を負わせ、

小が大に(弱者が強者)に勝った(倒した)出来事です。

ゲームストップ社は、ゲーム機やソフトの店舗販売の会社で全米に3600店舗あり、

子供の頃から身近な存在で、

その会社がヘッジファンドの投機の対象となったことに義憤を感じたのでしょう。

株価が下がることを目論みカラ売りを仕掛けたヘッジファンドは、

個人投資家(多くは若者)が買い支えたために逆に高騰し、

期日内の反対売買を余儀なくされ、巨額の損失を被りました。

当時は力のない個人投資家が巨大な機関投資家ヘッジファンドに

喧嘩をしかけて勝利する痛快な出来事として、証券界のフランス革命なんて言われました。

一人ひとりの投資額は少額でも、多くの人が集まると巨大な力となる。

「オルカン」は一本で全世界株式に投資できる優れものの投資信託です。

一人ひとりの判断、オルカンを持つことは正しい。

けれど皆が同じ行動をとることで、別なベクトルが働くことがあります。

一人ひとりの行動の結果として円安の山を築いてしまったのなら、甘んじるしかないのでしょうか。

円安では輸入品の価格が上がります。特にエネルギーコストの上昇は生活費に直結します。

円高円安は相対的なものですが、心地よい対ドルレートはいくら位なのか。

個人でできることは多くはないと思いつつも、少しでもできることはありそうです。

・オルカン一本ではなく、国内株投資信託もポートフォリオに入れる。

・海外投資収益の一部を定期的に受取る。

「分配型投信」の多くは海外の株式や債券、REITで定期的に円で受取るものです。

毎月分配型投信は新NISAの対象から外されたことを残念に思っています。

少しでも円安抑止となるには、

個人の総意が今とは反対の動きにならないと難しいのかなぁ。

一人ひとりも集まれば力となるはず。